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阿弥陀如来

阿弥陀如来の呪

阿弥陀如来(甘露王如来)信仰とか浄土信仰とかいっても、
なにも浄土教系の「南無阿弥陀仏」の口称念仏だけじゃないのですよ。
そもそも念仏とは「仏を念ずる」ことですから、
たとえば『阿弥陀経』などを観想の手引として観想念仏することは出来ますし、
称えるのだって「六字名号」以外にも色々とあります。

まず、「無量寿如来根本陀羅尼」、別の名を「阿弥陀大心呪」「十甘露真言」について書きます。
以下は、栂尾祥雲師の『常用諸経典和解』に依拠しております。


無量寿如来根本陀羅尼

無量寿如来とは阿弥陀如来、「アミターユス=無量寿如来」「アミターバ=無量光如来」のことです。
時間的に無量寿として三世一切の衆生を悉く済度し尽し、
空間的には十方一切の衆生を摂取し捨てないのでありますが、
この心髄根本を説くものということで、この陀羅尼を「無量寿如来根本陀羅尼」といいます。

これは『無量寿供養儀軌』に載せられているものでありますが、『阿弥陀経不思議神力伝』によると、
この陀羅尼は龍樹菩薩がある夜の夢中において授かったものと伝えられ、
その後、中国に至ったとされます。

さてまず、中国・梁代の道珍禅師という方があったのですが、この方の話をここで記しましょう。

ある時に夢の中に極楽浄土が現れて、
数百人の者が七宝の船に相乗りて向こう岸の極楽に向けて出立しようとしていました。
道珍禅師も喜んでその船に乗ろうとしたところ、
船上の人より、「これは浄業の熟さぬ者は乗れぬ」と言われたそうです。
道珍禅師の曰く、「私は一生のあいだ念仏を唱えて参った。なのにどうして乗れぬか」と。
すると船上、「師は阿弥陀経ともに阿弥陀大呪を誦ぜないからである」との声。
それを聞いて啼泣やまぬ中、はたと目が覚めました。
以来、それまでの学究すべて打ち捨てて、阿弥陀経と大呪のみを唱えること2万遍、
その時に西方の空中より白銀の台が飛んできて、声が空中に響きます。
「法師、命の終わればこの台にのってあなたは極楽に往生するであろう」と。
そしてまさにその通り、道珍禅師は命終の時には天の音楽が鳴り、
異香四方に漂って、聖衆来迎を示したと伝えられます。
その後には唐代に大いに流布し、日本にも弘法大師以来、この陀羅尼は大いに用いられました。

そこで、ではそもそも『無量寿供養儀軌』には、この陀羅尼はどう説明されているのでしょうか。

自性法界宮において、まず金剛手菩薩が大日如来に対して、
「私は濁世の衆生にこの陀羅尼を説こうと思いますが、どうか加被を垂れてください」と申しました。
つまりこの陀羅尼は、金剛手菩薩によって説かれたものである、ということです。
以降の記述を約めて言いますと、つまり極楽浄土に往生するに、
称名念仏の如き少福無慧の方便ではそれは期し難い、
三密の行とともにこの大呪を用いてこそ、極楽に往生して初地を得ることができよう、というものです。
三密というのは、
結局は「至心に合掌し阿弥陀如来の三世十方に及ぶ智悲の働きを憶念すること」で宜しいでしょう。
印契を伝授されておられる行者の方は、その印を結んでいただけば良いかと思います。

さてその他、『小無量寿経』には、
「この呪を誦せば、阿弥陀仏は頭頂に住し日夜に擁護、現世安穏・命終時には極楽往生させる」とあり、
また前述の『無量寿供養儀軌』にも、
「一遍を誦すれば、身中の十悪四重五無間の罪を滅し、一切の罪障すべて消滅する。
また七遍を唱えれば、即時に戒品清浄となり、
万遍には菩提心不退の三摩地を得て心は浄月輪の如くなり、
命の終わるに臨んでは、阿弥陀如来の来迎して極楽浄土に上品上生の往生を果たす」とあります。
また、『陀羅尼集経』には、
「陀羅尼の力は恰も日月の光の如く、之に比すれば念仏の功徳は夜燈の光のようなものである。
されば、人若し日日に此の陀羅尼を誦じ、之に兼ねて念仏せんか、
その功徳広大恰も須弥の高く、大海の深きが如くである」などと記されております。

では、具体的にこの陀羅尼の内容を見て参りましょう。
まず、漢字に移したものを掲示し、読みをかなで示します。

曩謨囉怛曩怛囉夜耶 
 のうぼう あらたんのう たらやぁや 
曩莫阿哩野弭跢婆耶 怛他蘗跢夜 囉賀帝 三藐三沒馱耶  
 のうまく ありや みたぁばぁや たたぎゃたや あらかてぃ さんみゃくさんぼだや
怛儞也他唵 
 たにゃたおん 
阿蜜㗚帝
 あみりてい
阿蜜㗚妬納婆吠
 あみりとう どはんべい
阿蜜㗚多三婆吠
 あみりた さんばべい
阿蜜㗚多蘖陛
 あみりた ぎゃらべい
阿蜜㗚多悉第
 あみりた しっでい
阿蜜㗚多帝際
 あみりた ていぜい
阿蜜㗚多尾訖燐帝
 あみりた びきらんてぃ
阿蜜㗚多尾訖燐多誐弭寧
 あみりた びきらんた ぎゃみねぃ
阿蜜㗚多誐誐曩吉底迦㘑
 あみりた ぎゃぎゃのぅ きちきゃれぃ
阿蜜㗚多嫰努批娑嚩㘑
 あみりた どんどび そばれぃ
薩縛囉他娑馱寧
 さらば あらた さだねぃ
薩縛羯磨訖禮捨乞灑孕迦隷
 さらば きゃらま きれぃ しゃきしゃよぅ きゃれぃ
娑縛賀
 そわか

そして、簡単な意味を示します。
陀羅尼は必ずしも意味を理解して唱える必要はないとされていますが、
私は知っていることはプラスになると思います。

曩謨囉怛曩怛囉夜耶 
 三宝に帰命す 
曩莫阿哩野弭跢婆耶 怛他蘗跢夜 囉賀帝 三藐三沒馱耶  
 尊き無量光を有する如来応供正遍智に帰命す
怛儞也他唵 
 即ち、オーム
阿蜜㗚帝
 不死の者、すなわち無量寿よ
阿蜜㗚妬納婆吠
 不死なる甘露より生まれたる者よ
阿蜜㗚多三婆吠
 不死なる甘露より生ぜる者よ
阿蜜㗚多蘖陛
 不死なる甘露を蔵せる者よ
阿蜜㗚多悉第
 不死すなわち無量寿を成就せる者よ
阿蜜㗚多帝際
 不死すなわち不滅の威光ある者よ
阿蜜㗚多尾訖燐帝
 不死すなわち不滅の神変ある者よ
阿蜜㗚多尾訖燐多誐弭寧
 不死すなわち不滅の神変を行ずる者よ
阿蜜㗚多誐誐曩吉底迦㘑
 不死すなわち不滅の空より称誉をなす者よ
阿蜜㗚多嫰努批娑嚩㘑
 不死すなわち不滅の鼓音ある者よ=常恒不変の説者よ
薩縛囉他娑馱寧
 一切の希望を成就せしむる者よ
薩縛羯磨訖禮捨乞灑孕迦隷
 一切の業と煩悩を尽滅せしむる者よ
娑縛賀
 平安・成就あれかし


抜一切業障根本得生浄土神呪

さて、「無量寿如来根本陀羅尼」は真言宗で常用されるものですが、
別のものに、『阿弥陀経』に付属しているとされる「抜一切業障根本得生浄土神呪」、
別の名を「往生呪」というものがあります。
これは羅什訳の流布本『阿弥陀経』には記載がないものの、
求那跋陀羅訳『阿弥陀経』にこの呪があったようです(残念ながら、この訳は「失訳」です)。
一見してわかるように、これは『無量寿如来根本陀羅尼』と非常に近いものです。
「根本陀羅尼」の縮小版かとも思われますが、「根本陀羅尼」のほうが増広されたものかも知れません。
前後関係が不明ですからこのあたりは何とも言い難いですが、
いずれにしても内容的にはほぼ同じことを述べていると考えて差し支えないでしょう。

根本陀羅尼については、上にも書いたように、たとえば『陀羅尼集経第三』では、
「陀羅尼の力は恰も日月の光の如く、之に比すれば念仏の功徳は夜燈の光のようなものである。
されば、人若し日日に此の陀羅尼を誦じ、之に兼ねて念仏せんか、
その功徳広大恰も須弥の高く、大海の深きが如くである」とあります。
また『無量壽儀軌』などにもその功徳の広大なることが説かれていますが、
これは根本陀羅尼の精髄である抜一切業障根本得生浄土神呪にも当然ながら通じるものであり、
「南無阿弥陀仏」のいわゆる「口称念仏」と並ぶ、阿弥陀如来信仰のもうひとつの姿と言えるでしょう。
『大乗起信論』などに説かれている「念仏往生」については、
そこに「観想念仏」の大切さが込められていますから、
六字名号よりもこちらの呪のほうが相応しいのかも知れません。

全出して、解釈してみます。

抜一切業障根本得生浄土神呪
          劉宋天竺三蔵求那跋陀羅 詔を奉じて重ねて訳す 

南無阿彌多婆夜哆他伽哆夜
哆地夜他
阿彌利都婆毘
阿彌利哆悉眈婆毘
阿彌利哆毘迦蘭諦
阿彌利哆毘迦蘭哆伽彌膩
伽伽那枳多迦隷
莎婆訶

若し善男子善女人あつてよくこの呪を誦せんに
阿弥陀仏は常に其の頂きに住して
日夜擁護し給ひ
怨家をして 其の便りを得しむるなく
現世に常に安穏を得
命終の時に臨み 任運に往生せん

【解釈】

なむ あみたばやあ たたぎゃたやあ namaḥ amitābhāya tathāgatāya
 南無無量光如来
たぢゃたあ tad yathā
 所謂
あみりとうばべい amṛta-ud-bhave
 甘露不滅を生む者よ
あみりた しぢばべい amṛta-siddhi-bhave
 甘露不滅の成就あらしめる者よ
あみりた びきらんてい amṛta-vikrānte
 甘露不滅の神変ある者よ
あみりた びきらんたあ ぎゃみねい amṛta-vikrānta-gāmine
 甘露不滅の神変を行ずる者よ
ぎゃぎゃのう きちきゃれい gagana-kṛti-kare
 虚空の如き作用を作す者よ
そわか svāhā
 成就あれ


参考までに、最後に、よく使われる阿弥陀小呪も掲載しておきます。
阿弥陀小呪も、『無量寿供養義軌』に出て参ります。


阿蜜㗚多 … 甘露・不滅 
帝際 … 威光 
賀羅 … 運載 

大智・大悲の威光遍く照らす如来に帰命す、というような意味になろうかと思います。

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